魔法の原石  プロローグ

見山敏著書『魔法の原石』仕事と人生が輝きだす物語です。

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プロローグ

 

真っ赤な太陽が、惜しげもなく光を発し、燦然と輝く夕日のような光景が目の前にひろがっている。

そこは、温かくポカポカした場所でとても居心地のいい場所だ。

まるで大海に浮かんでいるような、何か大いなるものに、 包まれ、守られているような・・・。

「この風景、どこかで見たことがある」

なぜか、懐かしさとも、愛おしさとも言える気持ちが、胸の奥からこぼれそうなほど、あふれている。

「ここはどこなんだ?」

「いったいどこにいるんだろう?」

頭の中を、疑問と不安の想念がぐるぐると駆けめぐる。

「あ!そうだ。ここは母親の胎内だ!」

その記憶が、突然、鮮明によみがえって来た。

「なんだろう。このとてもやすらいだ気持ちは・・・」

遠くから若い男女の会話が聞こえてくる。

「ねえ、あなた。最近おなかの赤ちゃんがよく動くのよ」

「そう」

「ほら、また動いた!」

「どれどれ」

「きっと元気な赤ちゃんだね」

「本当ね。私たちにとってかけがえの存在になるわ。きっと」

「そうだね。きっと僕らにとってかけがえのない愛の結晶になるね」

夫だろうか?

嬉しそうに微笑む男。

「かけがえのない存在・・・かけがえのない存在・・・私たちの大切な赤ちゃん・・・」

 

その瞬間、白く光り輝く明かりが目の前を通り過ぎた。

「うっ、眩しい・・・」

全身がまるで金縛りのような状態で、その光が体を通り抜けていく。

ピーポー、ピーポー、ピーポー、ピーポー・・・突然、けたたましいサイレンの音。

「うるさいな、また救急車か」

ねぼけまなこでつぶやきながら、目をこする。

残暑が残る蒸し暑い昼下がり。昼食の後のうたた寝の最中だった。

「また同じ夢だ・・・」

ここ最近、何度か同じ夢を見ている。

なぜ、その夢ばかり見るのかわからない。

目覚めるとそこには、厳しい現実が、相変わらず存在していた。

 

『魔法の原石』見山敏

 

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